新しい風に乗って

駅を訪問したり保存車を訪問したりする方のブログです。

顔認証改札のモヤモヤ感

大阪地下鉄・大阪メトロ(笑)の話

 

ご存知の方も多いかと思いますが、大阪地下鉄では中期経営計画として、2024年までに顔認証技術を用いた改札を行うことを発表しています。

subway.osakametro.co.jp


 

ぼくはこの顔認証改札について、面白いなあとは思いつつも個人的にすごくモヤモヤしているので、そのモヤモヤポイントを以下に列挙していこうかなと思います。

 

 

発表資料を見ていくと、次のことがわかります。

・事前に顔を登録すればICカード・磁気券を使わずに改札を通過可能になる

これですね。

では、ここからぼくの個人的なモヤモヤポイントです。

 

・残高の保持はどこで?

 

当たり前ですが、人間の顔には統一したフォーマットというものがありません。目や鼻、口の位置や形というのは大まかには似ているところもありますが、よっぽどの双子でもない限りは全員が全員違う顔をしています。この状態で、それぞれの顔を今までのプリペイドICカードで言うカード番号と対応させることは容易だと思います。各改札がスキャンした顔を特定のアルゴリズムで数値化すれば十分可能に思えます。

ですが、その顔には残高情報は載せられません。カードの場合は何かしらカード情報を書き換えますが、顔ではそれはできません。チャージするたびに整形なんかできません。

 

では次に、顔に残高を保持しなければいいという理論になります。これは言い換えると、サーバーで残高情報を一元管理するということになります。これは次の問題が生じてきます。

 

・顔情報の管理の安全性は?

 

現在、大勢の人が顔情報を活用したシステムは存在するかというと、これは出国ゲートがあります。大きな空港で、パスポートを読取らせて顔情報と一致するかどうかで本人確認を行うものです。大阪地下鉄でも、登録する人数は相当数いると予想できるので、大勢と言っても差し支えないでしょう。その登録した顔情報はどこで保持されるのか?

先述の出国ゲートの場合、照会する顔情報はパスポートの本人ページであることから、端末上に顔情報は保持されません。顔認証するだけならネットワークに繋げなくてもできると思われます。一方で地下鉄の場合、顔情報をどこかしらにおかなければなりません。本人の同意のある以上肖像権に関する問題は無いとは言えますが、重要な個人情報であることから流出に十分な配慮が必要です。じゃあ個人が顔情報を照会できるモノを持っていればいいじゃないかと思う人もいるかもしれませんが、それ、ICカードでいいんじゃないですかね?と思います。全く利便性を感じません。

 

・処理速度

 

利用者が顔情報を事前登録して改札を通過するためには、サーバーに照会する必要があることは先に述べた通りです。とすると、処理速度の問題が出てきます。

今のICカードは残高情報をカードが保有していることもあり、カードと改札機との通信で改札通過判定を行います。そのため高速で「タッチアンドゴー」をすることが可能であると言えます。一方で、通信を伴う場合、処理速度はそれと比較すると遅くなってしまいます。最近話題のQR決済もそうですね。あれもネットワークと通信しているのでICカードで支払う場合と比べると決済判定が圧倒的に遅いんです。これを駅の改札に導入したとして、梅田やなんばなど混雑する駅では客が詰まって混乱してしまうのではないかと思います。

 

・誰のための改札なのか?

 

結局のところ、誰のための改札なんでしょう

・定期利用者→ラッシュ時の改札通過が遅くなる手間

・そこそこ利用者→特になし

・新規利用者→事前登録必須の手間

あまり利用者向けにメリットが無いような気がします。どちらかといえば、磁気券投入部のメンテナンスの手間を減らしたい事業者側にメリットが大きいのかなあと思います。

 

・ぼくのかんがえただきょうてん

 

言いたい放題言ってお前の意見は無いんかい!って怒られても癪なので、一応妥協案みたいなものを言っておきます。

簡単に言うと、事前に顔情報を登録した際にIDタグを配布し、それを保有していれば顔認証で高速に通過できるというものです。

駅の周囲に設置する受信機でIDタグを検知し、利用者が改札を通過するまでにその情報をサーバーから改札機に落としておくことで、顔情報の照会がローカルで行われるようになり、ICカードに近い処理速度が実行できるのではないかなと思います。降車の際も駅コンコースに受信機を用意しておけば同様のことができます。残高についてはそのIDタグが保有するという形です。通信が多くなるためセキュリティ面では不安がありますが、このあたりが妥協点になるんじゃないかなあと思っています。