オカルティズムのある駅だ。
この駅が含まれる大分~佐伯の区間にはちょくちょく古い木造駅舎を持つ駅が存在している。この駅も大正時代の開業から数えて100年以上の長い歴史を持つ駅である。
島式1面2線の交換駅で、駅舎からは跨線橋で連絡している。バリアフリー的には望ましくはないが特急列車もそこそこ通過するのて仕方がないかもしれない。上下線の外側にはそれぞれ1線分だけの敷地があるように見えるが、左側は恐らく貨物扱いをしていた頃の線路敷だろう。右側は架線柱がそのスペースを確保しているので恐らく待避線の類か。
跨線橋から振りむくとこのような感じになる。真ん中の瓦屋根が駅舎である。右奥には鳥居が見えるが、これが鳥越稲荷という、まあいわゆるお稲荷さんである。ここに奉られている神様が、かつてこの駅に災厄をもたらしていたのである。
神社の手前に説明板がある。書かれている内容を要約すると以下のとおりである。
・日豊本線を建設する際に鳥越の山を掘ることになった。
・山狐に立退きをお願いしたが、工事中に死傷事故など災厄が相次いだ。
・近くの広場に稲荷大明神を奉祀したら災厄が止まった。
・駅が開業後、稲荷を放置してたらまた災厄が増えた。
・駅や近隣で怪火や洋間が出没した。10年で客が21人も死んだ。
・駅長の決定で駅前に稲荷を開眼した。
・以後災厄が起こらなくなった。
…というものである。実際そう書かれている。
ところが臼杵市の紹介ページを要約すると、ちょっと違う。
・駅が開業して以来、自殺や轢死、変死病没が10数年多発していた。
・新任の駅長が霊媒師に聞くと狐の祟りだと言われた。
・工事屋に聞くと、実際に鳥越の山を切り取って狐の巣を壊したと言われた。
・駅長の決定で駅前に稲荷を開眼した。
・以後災厄が起こらなくなった。
・後任の駅長がある年多忙で例大祭をサボった。そしたら駅構内で大事故が起きた。
・以後、毎年関わらず例大祭が行われている。
というものである。駅長の発案で駅構内に稲荷を開眼したのは共通であるが、その手前のエピソードが若干異なっている。(一応、新任の駅長が開業までの経緯を知らないとすれば整合性はとれるが…)
100年以上前の話なので真偽は一切分からないが、きっと狐の祟りというのはあるのかもしれない。
ところでこの駅は今は無人駅である。無人駅である以上駅長が例大祭を執り行うこともできない。となると駅周辺の住民たちが主体となって例大祭をしていることになるわけだが、言い換えるとこの駅の安全は地域住民によって守られているということではないだろうか。頭が上がらないものである。