新しい風に乗って

駅を訪問したり保存車を訪問したりする方のブログです。

JR西日本_紀勢本線:芳養駅

せっかくある設備を駅利用者の利便性の為に活用できていないという意味では、あまり良い駅ではない。

紀勢本線JR西日本側、いわゆるきのくに線の中で紀伊田辺駅の隣にある。読みは「はや」で改めて見ると難読である。紀勢本線の御坊~紀伊田辺は1時間に1本未満で、どうしても日中時間帯に訪問を組み込めなかった。仕方が無いので紀伊田辺に宿をとり、早朝に大阪方面への列車が増える時間帯(ボーナスタイム)に訪問した。

駅舎はインパクトのあるデザインであるが、これは紀の国トレイナートという企画で2016年頃にデザイナーによって塗られたもの。

 

ホーム上の待合室も同一のデザイナーによってペインティングされている。動物や人間、乗り物等が時速とともに描かれている。電車が100になっているのはきっと特急でも227系でもなく前任の変な顔した113系のことだと思う。また、電車の上のカラスは足が3本ある。八咫烏だ。

 

 

跨線橋から。駅西側には複線断面のトンネルが口を開けているが、紀勢本線はそんな新しい時代に開業した路線ではなく、改良によって複線化された路線である。大抵、こういう複線断面トンネルの近くには横にそれるようにカーブしていく単線分の敷地が残されているのだが、ここもそうである。もし気になるのなら航空写真を見てみるといい。現行線が南部までをトンネルで直線的に結んでいるのに対し、単線の線路跡は山を迂回するかのようにおおきく南下している。

また、駅前からは海が見えないもののこの跨線橋からであれば遠目に視認することができる。訪問時は早朝だったので近隣の国道の通行もまばら、太平洋の波音を聞くことができた。

そしてこの跨線橋こそが僕の一番納得のいかないポイントである。

 

駅舎から跨線橋を見る。両ホームを結ぶ役目の他、駅の北側に至る通路が設置されている。ところがこの駅北側への通路は通行することができない。よく見ればわかると思うが、白い幕が設置されている。これは津波避難通路として緊急時のみの使用を前提としているためだ。緊急時には幕を突き破って高台に避難する算段であるらしいが、写真を見てもわかるように駅北側の高台にも一定数の住宅がある。こちらがわの住民は駅への通路は実際にあるものの、一切使用できないということになる。僕はここが非常に不満である。

 

ところで紀伊田辺駅の反対側の隣駅、紀伊新庄を見てみよう。ここも2つのホームを結ぶ跨線橋津波避難通路として設定され駅北側へ向かう階段が設置されているが、ここの通路は常用できる。普段使いでこの北側から駅構内に入り、列車に乗ることができるのである。設置されている自治体も同じ田辺市なのに扱いが違うのである。前日にこの駅を訪問しているので、芳養駅の対応に首を傾げた。

 

ひとしきり考えたうえで結論を見出した。

答えはICカードリーダーにある。先の紀伊新庄駅は停車するすべての列車が227系で、ローカル輸送に特化しているために車上にICカードリーダーを備えている。つまり駅利用者は列車に乗り込んでカードをタッチ、または列車を降りる時にタッチして駅構内に出るのである。

一方でこの芳養駅は大阪環状線まで直通する列車が停車する駅である。環状線まで走る223/225系にはICカードリーダが設置されておらず、駅側にカードリーダを置いてある(227系でもこの区間は駅のカードリーダーを使用するように案内されている)ため、もし北側通路を開放した場合、ICカードリーダを経由しないで駅ホームに至る経路が生じてしまうため封鎖して駅舎側に一本化しているものと推定する。

 

…と、一通り考えて北側通路を封鎖している理由は知った。しかし理由を知ったからと言って折角の通路を封鎖しているこの事象は納得できないものである。駅前一等地になるはずだったアパートオーナーの心情やいかに。

 

どうにかして他所からカードリーダ回収してきて北口を開放できないものだろうか。田辺市さんにもちょっとぐらいは考えてほしいものである。