広島生まれの人間として、路面電車が郊外電車に乗り入れるというという光景は日常であった。しかし車両はというと全て路面電車規格の床の低い電車である。広島の場合、郊外電車側の床の高い車両というのは私が生まれた時には既に営業運転をしておらず車庫の肥やしになっていた。(私はその肥やしすら見ることもできずに解体された)
広島以外に目を向けると、比較的最近(といっても20年近く前までではあるが)までは名鉄の岐阜県内600V線区にて郊外電車と路面電車の共存が実施されていた。路面電車の車両が鉄道線に乗り入れるという姿はここでも見ることができたが、路線ごと消えた。
さて2016年、この福井県に路面電車と郊外電車の直通運転が新たに誕生した。さらにいえば上記2例とは異なり福井鉄道とえちぜん鉄道の相互直通運転というオマケまでついてくる。3年ほど前の2022年1月に、この直通運転区間の駅を見たくて福井まで向かった。
えちぜん鉄道の田原町駅から福井鉄道に乗り入れ、路面軌道を経由して福井駅(西側・フクイティタンがいる方)や武生の方に向かう直通系統はフェニックス田原町ラインと称する。路面区間に乗り入れるという性質上全ての電車が床の低い路面電車規格の車両で運転されている。一方で、直通とは無関係の従来の三国芦原線の大型電車は田原町からそのまま郊外電車の線路で福井駅(東側・トリケラトプスがいる方)へと向かう。この両系統が田原町~鷲塚針原で同じ線路を走ることとなる。今回の八ツ島駅はそのうちの一つである。
開業は比較的新しく、平成19年とのこと。京福電鉄からえちぜん鉄道への移管数年後に開業したこととなる。さらには隣の日華化学前駅も同日に開業した様子。両駅間の距離はそこまで長いものではなく、(もしかすると北陸本線の第三セクター転換を見越して?)駅数を増やしてきめ細かく客を拾おうという方針に切り替えたものと思う。実際それでいい。
そしてやはりこの駅の一番の魅力は2段のホームだろう。大型電車用の高いホームと小型電車用の低いホーム、これが隣り合わせになっている姿は宮島線のそれと同じだ。ああ、たまらない。
ついでに言うと、この駅はどうも駅開業時、路面電車が乗り入れてくるなんて遠い未来の話の頃から低いホームの設置を想定して建設されたというから驚きである。Wikipediaなりストリートビューなりでこの駅の2016年以前の写真を見てほしい。今は低いホームになっている場所にやぐらを組んで高いホームを仕立て上げているのだ。もし最初から高いホームを作るのであればその位置までコンクリートまで盛ればいいところ、わざわざそういう構造にしたことによっていつでも直通の受け口を用意していたというのは驚きである。新しく隣に高いホームを作り、合わせて既存の高いホームを撤去、低いホームに仕立て上げたということになる。サムネイル写真手前側の高いホームがその新しいホームである。
その低いホームは狭いが、電停として考えるとと十分な幅である。大型電車が目の前を通過(してすぐ隣の高いホームに到着)するのはちょっと怖いが、普通の人はここより少し幅の広い高いホームで待てばいいので問題なし。
その他狭くて困ることというと、駅名標を綺麗に撮れないことがある。ホーム上からはどうやってもこれである。まあこれは趣味者としての苦しみなので一切この意見を参考にして何か改善するとかはやらなくて良いんだけれども。