新しい風に乗って

駅を訪問したり保存車を訪問したりする方のブログです。

202305GW訪欧記⑤:ハノーファーの古い電車を嗜み、ウィーンに向かう

前回の続き

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最初から見るならこれ

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ハノーファーの古い電車を嗜んだのち、ウィーンに夜行列車で向かう。

 

Marienburger Straßeの駅で暫く待っていると、アンティークな列車を見ることができた。銀に緑の3両、あるいは6両編成の電車ではなくクリーム色に赤帯の(私としてはこっちの方になじみがある)色だ

この2023年5月1日は、Maibaumexpressというイベントが開催されていた。ハノーファー路面電車を運営しているÜstraとは別に旧形電車の保存団体が存在しており、その保存団体が保存している車両をどんどんと本線で走らせるイベント日がこの5月1日だった。これはハノーファーの訪問スケジュールを決めて以降に発表されたもので、自分の運の良さに感謝するしかなかった。

 

終点のSarstedtまで南下し、次に来る旧型電車を待った

これはデュワグの連接車522。前面部の警戒色のような塗分けが好きだ。デュワグというのは西ドイツに存在していた路面電車メーカーで、こいつが国内の色々な街に納入したセミオーダーメイドのような車両だ。ちなみに広島でかつて走っていたドルトムント市電70形もデュワグ、ハノーバー電車238号もデュワグ、グリーンムーバーもデュワグ原典のシーメンス。広島のドイツ由来の電車はだいたいデュワグが絡んでいるのだ。

それはともかく、冒頭の車両も含め、ハノーファー謹製の車両は前灯が縦に2つ並ぶのがアイデンティティなのだろうか?

 

割と最近製造された(と思われる)列車も保存運転されていた。これは601号で、前記事における3連接の6000形のプロトタイプとして作られた2連接車両のようだ。

336号。これもデュワグだが、連接車ではなく1両運転だ。御覧の通り進行方向右側にしか客用ドアがなく、撮影方向によっては非常にスマートな見た目となる。ただし、現在の「シュタットバーン化された」ハノーファーでは進行方向左側にホームのある電停も少なからず存在するようで、旧車はこの物理的に降りることができない駅をかなりのスピードで通過していた。なかなか爽快な体験であった。

 

Gleidingen Thorstraße付近、道路が一番狭くなる区間で待っていたらちょうど目の前で2編成の旧車が離合してくれた。

ところで、このハノーファーの保存団体が所持している車両に239号というのがある。お察しの通り、広島に渡った238号、Wehmingenの博物館に保存されている236号と同じ系列の車両だ。この車両も本線上で運転されることを切に望んでいたが、あいにくこの日は走ることが無かった。非常に悲しい。ただ次の訪問時に期待するほかない。236号の動態運転も含め、まだまだ機会はあるはずだ。

 

結局こいつらが入庫するまで沿線を徘徊していた。楽しかった。

とはいえまだ17時過ぎ、あと4時間ぐらいは自由に動けるうえ、太陽が沈む気配もない。一度Hannover Hbfに戻ってきて、別の方向に向かってみることにした。

 

Schwarzer Bär付近にて、信号待ちの電車。この奥に地下区間へのトンネルがある。つまり地下から出てきた直後に信号待ちをしているわけだ。楽しい。

 

Goetheplatz。ラウンドアバウト(というよりはロータリーかもしれない。差異がわからない)があるなかで、その円形に周回する道路に沿って軌道が敷かれている。同じ方向に向かう自動車であれば接触することはないが、例えば別の方向から来て別の方向に向かう自動車の場合は軌道と2回交わることになる、結構走行には注意する区間なのかもしれない。鉄道会社的には分岐どころかこの区間で折返しできるのは地味に大きなメリットだと思う。

 

地下駅でふと上を見るとパンタグラフがめちゃくちゃ折りたたまれていた。さすがに600Vとか750Vだろうと思うが、ここまで架線と屋根上機器が近いと絶縁とかの処理が大変だと思う。

 

複数系統が混在して走っている。各系統概ね10分~15分間隔だった。ここの駅はそれが重なるので概ね5分に1本は電車が来ることになる。便利である。

 

さて、Hannover Hbfに戻ってきた。

時刻は20時40分だが、西を向けば太陽の明るさがまだ残っている様子。ハノーファーは北緯52度の位置にある。日本では稚内の緯度が北緯45度であり、北緯52度となるとさらに北、つまりは樺太になる。樺太の南北を分けるのが北緯50度なので、樺太でもかなり北の方になる。

 

この日の宿は日本では数少なくなった夜行列車だ。nightjetというオーストリア国鉄が運営する夜行列車に乗りウィーンまで向かうことにした。クシェットという3段寝台であればユーレイルパスに追加で20ユーロ程度で乗ることができ、宿に泊まるよりもコストパフォーマンスがいいと思うのは電車オタクの性なのだろうか。

 

乗ってみればその先に見える景色は側通路式のご存じ寝台客車。22時前に乗車したということもあり車内は既に減光された状態。指定されたベッドに向かえば区画の照明が落とされており私以外の5ベッドは就寝間際といったところだった。そそくさと自分の中段寝台に潜り込み、カバンを足元に投げ横になった。すぐに車掌がやってきて私一人の検札をした。この車掌は1両に1人専属のようで結構人件費がかかりそうだと思った。

ユーレイルパスのQRコードと、紙で印刷した寝台券を見せたところ、Coffee?Tea?と聞かれた。どうやら明日の朝に提供されるらしい。コーヒーを頼んだ。紙の寝台券を車掌が回収し、部屋に静寂が戻った。3段式寝台で起き上がることもできないほど狭いものだったが、暗闇の中どうにかして転落防止の網を仕立て就寝に着こうとした。すると下段からペットボトルが放り込まれた。なんでも、各ベッドに1本ミネラルウォーターが用意されており、これはおまえの分だからとこの奇妙なアジア人に渡してくれたのだ。

 

さて、nightjetの3段式寝台に揺られオーストリアはウィーンへ。工事でウィーン到着が遅れるということは事前に情報を得ているが、果たしてどれほどだろうかと思いながらも寝台客車列車特有の心地よい揺れと滑るような走行音に私の意識は落ちていった。

 

続き

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