新しい風に乗って

駅を訪問したり保存車を訪問したりする方のブログです。

202305GW訪欧記④:ハノーファーを徘徊する

前回の続き

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最初から見たい人はこれ

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ハノーファーで1泊。またも早朝6時半に起床。部屋が相当乾燥しており、昨晩洗っていた衣服もすっかり乾いていた。レストランへ向かい、適当に朝食をとった。予約をした際は限界まで寝る想定で素泊まりで手配していたので追加料金という扱いとなり、少し損をする形になった。

 

朝日に照らされるHannover Hbfだ。十数番線まで並ぶ大きな駅だ。改札が存在しないためにホームから階段を下りれば即駅の自由通路にたどり着くことができる。駅のレイアウトの自由度が高いんだろうか。

 

コンコースのスーパーで水を買った。ヴォルビックは軟水なので胃腸に優しいが、500mlペットボトルを買ったにもかかわらず0.25€ほど消費税か何かを徴収された。これであればもう少し大きなサイズを買っておけばよかった。

 

さて、ハノーファーにはシュタットバーンが存在する。これは路面電車都心部を地下化したり、あるいは長い車両を導入してしっかりとした都市鉄道として叩き上げたような乗り物だ。将来的に地下鉄として発展させるという点は異なるが、前回の記事におけるブリュッセルのプレメトロとだいたい同じことをやっている。この地下駅もそのシュタットバーンのHauptbahnhofになる。ここから隣のKröpckeまでは2種類の系統が重なっているため地下複々線のような構造だ。

6000形という3車体の電車がやってきた。全長も30m程度で、1編成の長さは広島の連接車たちとほぼ変わらない。このような小型な電車が1編成、あるいは2編成連結で数分おきに地下駅にやってくるというのは刺さるものだ。

1駅だけ乗ってKröpckeに来た。この駅もなかなか贅沢な構造をしており、写真右側にちらりと見えるホームの他、その真上、さらに奥にもホームが存在している。説明が難しい。

B1 地下コンコース

B2 Hbf-南西方面のりば、およびHbf-東方面のりば

B3 乗換コンコース

B4 西-東方面のりば

 

伝わるだろうか、WikipediaハノーファーLRTの記事(ドイツ語版)を見れば配線図が書いてあるので参考にしてほしい、とにかく、地下迷宮のような駅なのである。ここに小型電車が来るというのが刺さる。

 

乗り換え、次のAegidientorplatzは赤坂見附のような2系統の方向別地下2層乗換駅、さらに地下駅を2駅過ぎるといきなり道路の中央に出た。さすがに刺激が強すぎる

 

Clausewitzstraßeで下車。道路中央の線路空間は十分な敷地が確保されており、トイレこそないもののベンチや券売機はしっかりと備えている。これは立派な都市鉄道なのである。

ここで一旦電車活動を控え、駅北側へと歩き、ハノーファー市立公園内部にある茶室を見に行くことにした。

ハノーファー市は私の生まれ育った町、広島市姉妹都市である。

www.city.hiroshima.lg.jp

 

その姉妹都市としての国際交流の一環として、広島市内の中心部にハノーバー庭園というものがある。王宮庭園を模した庭園らしい。

なお、ドイツ語読みではハノーファーになるが、広島市の資料などでは英語読みであるハノーバーを使用しており、実際私も英語読みの方で教わった。以後、適宜使い分けるのでご容赦願いたい。

で、広島市ハノーファー市ゆかりのモノがあるということは、当然逆にハノーファー市内にも広島ゆかりのモノがあるわけである。この茶室「洗心亭」こそがそれなのである。

ご丁寧に説明文の記載がある。広島市との姉妹都市記念であることに加え、上田宗箇流であることもしっかり記載されている。この上田宗箇流というのは広島に出自のある茶道の流派であり、広島電鉄本社ビル1Fに存在する茶室「千鐘亭」も上田宗箇流である。

しっかりと日本庭園そして茶室だった。さすがに運よく茶道教室当日だった…なんてことは無い。

 

さて、広島ゆらいのモノはもう一つ近くに存在する。こちらへも電車で向かった。

Bult/Kinderkrankenhausという駅で降りた。Bultというのが地名で、後ろのKinderkrankenhausは子供の病院という意味だ、日本風に言えば「ブルト・小児医療センター」みたいなものだろうか。ここからそのKinderkrankenhausの脇を通るように公園に出ると目的地となる。

Hiroshima Gedenkhainだ。広島祈念の森といったところか。広島市の桜が110本植えられている。

このモニュメントも、広島を意識したものだ。奥には広島電鉄被爆敷石を使用した観音様の彫像がある。

去年植えられた被爆銀杏2世だ。現地では被爆アオギリだと思っていた。

 

暫くこの公園に滞在し、駅へ戻ったところで電車活動を再開。次の訪問先へと向かう。Kronsbergまで電車に乗り、駅前の銀行でユーロを補充。330系統のバスでWehmingenへ向かった。

 

 

この330系統のバスは路線図にもしっかりと記載されているが、来たのはバスではなくハイエースだった。明らかに地元の利用者と奇妙なアジア人1人を乗せて郊外を爆走していた。

 

Wehmingenのバス停から少し歩いたところに目的地がある。StraßenbahnMuseum、路面電車博物館だ。ちょうど開館の11時に到着することができた。

ここはハノーファーを中心として、ドイツ国内外の路面電車を収容、しかも動態保存している規模の大きな博物館だ。この日、2023年5月1日は月曜日、本来は休刊日であるがこの5月1日というのはメーデーでドイツでは祝日としてみなされているらしい。絶妙なタイミングで訪問することができた。もっとも、この訪問を実行するためにロンドンでの滞在を切り上げざるを得ず、強引なスケジュールになったと言っても過言ではない。絶対に行きたかった場所なのだ。

 

左からベルリン市電のタトラ、ポーランドポズナンのデュワグ、朝乗ったのと同じハノーファー6000形デュッセルドルフのデュワグだ。こいつらがしっかり展示運転をする。このほか、ドイツ国外ではアムステルダムやウィーンの路面電車、静態保存ではブダペストの地下鉄も保存されていた。

これらの数多くの電車を紹介するときりが無くなるので、代表で1車両だけ紹介したい。これこそが私がこの博物館を訪問した最大の理由で、そしてこの2023年のゴールデンウィークにヨーロッパへの渡航を決断した大きな要因である。

ハノーファーの236号だ。この見た目に説明は不要であろう。そう、あいつだ、あいつなのだ。

これは、広島の写真だ。

 

ハノーバー電車として有名な広島電鉄238号と同型の車両である。この238号は広島市ハノーファー市姉妹都市記念にわざわざ贈られた車両で、ハノーファー時代はこの路面電車博物館に在籍していたようである。つまりこの2両は市電時代どころかこのWehmingenの地で共に保管されていた車両なわけである。

ドイツのハノーバーという町からやってきた電車と言われて育ってきた人間にとっては、そのハノーバーに訪問して実際に同じ見た目の電車が保存されているという事実で既に感動ものなのである。しかもこちらの236号は原型である。連結器だってあるし車内に日本語の書かれた機器は一切存在していない。広島を知らない電車なのである。

 

で、この236号、もちろん動態保存である。時と場合よってはトレーラーを牽引して展示運転に駆り出されることもあるらしいが、この日は車庫の奥底に眠っていた。こればかりは仕方がないが、逆に言えば再訪問の機会が十分に残されているということである。もしこの日に展示運転を見てしまったらきっと2回目に行くことは意識していないであろう。まだ心残りがあるからこそ、次の訪問に期待を寄せることができるのである。

 

舐めまわすようにこの車両を見た後、展示運転に乗車。しばらく滞在の後、バスの時間が来たので路面電車博物館を去ることにした。本当はもう少し滞在したいが、この日はハノーファー市内でもう一つ大きなイベントがあった。そちらでも見たいものがあるのだ。

 

330系統と違い、390系統には普通サイズのバスが来た。70km/h制限の道路を85km/hでぶっ飛ばす豪快なバスだった。

 

このツイートを残しているように、随分とトロピカルな乗務員だったことは伝えておきたい。このバスに乗っている途中、交通事故か何かで所定の道路が封鎖されていたため、路地裏を迂回して若干遅れていた。そしてこの乗り継ぎバス停(Gleidingen)に着いた時は自バスの前に電車が停車しており、しかも動き出していた。そしたらこの乗務員は電車に乗り継ぎの便宜を測れと言わんばかりのバッシングをし、あろうことか左側、反対側の車線に飛び出して60m級の電車を追い抜こうとしていた。たぶん他の乗客がドイツ語で「もうええから」みたいなことを言ったのだろう、対向車との正面衝突をすることはなかったが、下手をすればハノーファーで病院送りになるところだった。

 

さて、Gleidingenから来た列車に乗ってハノーバー市街地から離れるように南下してみた。不思議なことに沿線にカメラを構えたいわゆる現地オタクが非常に多く、それどころか車内でも首からカメラをぶらさげた人間が非常に多かった。

なんとなく、影の当たってない電停、Marienburger Straßeで降りた。

 

しばらくすると、銀色に緑のシュタットバーンとは一味も二味も違う、さっき博物館で見たようなアンティークな電車がやってきた。

この日のハノーファーでの特大イベントだ。

 

つづく

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