北海道は距離感覚が狂う。
北海道の距離感覚といえば、直進110kmでイオンに向かうとか、札幌~小樽~函館~室蘭~釧路~網走~旭川~札幌を2泊3日で行こうとするとか、そういうマキシマムな話になりがちである。
違う、そうじゃない。
この赤井川駅、訪問自体は北海道の中では比較的容易だし、函館本線と並走して国道5号も走っている。さらにはその国道5号にはそれなりの本数で路線バスが走っている。
つまりだ、この駅で降りて国道のバス停に向かう、さらにバスを捕まえて隣の駒ヶ岳駅に向かうなんてことは容易だし、実際にそれを実行するつもりだった。
右の奥、駅の外に至る道、この道を700m歩けば国道に出ることができるはずだったけれども、できなかった。
なぜか。
考えてほしい。
砂利道に覆いかぶさるような鬱蒼とした光景、さらには駅までの一本道という滅多に人の通らない道路、まあまあ市街地から離れている駅、訪問日は10月、徒歩…
これヒグマと出会ったら詰むじゃん?
いくら人間様が偉大な頭脳を持っていたとしても、自分よりデカく言葉の通じない動物を面して、逃げる、救いを求めることができない気がしてならなかった。
この道は車で通る道、人間が単独で通るような道ではないと判断したわけだ。
たった700m先、けれども向かうことに躊躇する。
北海道は距離感覚が狂う。
隣の駅に出ていくのを諦め、駅に滞在することにした。構内踏切が鳴り、高速で通過する特急列車。その人工音に信頼しっぱなしであった。