新しい風に乗って

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2025GW訪欧記02:変な駅を見るためにカッセルへと向かう

前回の続きである。というより、前回は日本からドイツまで飛行機に乗り続けて、フランクフルト空港に降り立っただけで終わったので事実上ここからが本編である。ぼくの行きたい場所に行った旅行なのであまりメジャーな観光地には行かず、電車主体の旅行?記だ。

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この日の宿は飛行機の遅延のリスクや、そもそも十数時間もエコノミークラスに座ってきた累積疲労のことを見据えてフランクフルト市内に手配した。空港直結の駅から電車に乗り市内へと向かう。前回の訪欧時とはちょうど逆のルートをたどって地下コンコースへとたどり着いた。券売機を叩いて市内までの6.6ユーロの切符を買った。2023年の切符を取り出してみると5.8ユーロと書かれている。ここ2年間で13%も値上げしているようだ。世知辛い…

写真というか、動画の切り抜きである

ホームでしばし待っていると、SバーンではなくREが(ドイツらしく)数分遅れでやってきた。快速のようなもので、切符としてはSバーンだろうとREだろうとどちらに乗っても問題ない。行先にきちんとフランクフルト中央駅が表示されていたので、これに乗り込んで中央駅へと向かった。

発車してすぐにけたたましいエンジン音が響き渡った。空港駅が地下だったから勝手に電車しか来ないものと思っていたが、どうやらこの車両はディーゼルカーのようだ。空港駅に煙を振りまいていったのだろうか?

空港駅で乗った時は特に意識していなかったが、REに乗ると駅ホームよりも車両の床の方が低くなってしまうようだ。ドイツ鉄道標準の低いホームと低い床のRE、あるいはSバーンの高いホームと高い床のSバーンの組み合わせであれば特に問題なく乗降できるのだろうが、この列車はSバーン用の高いホームに低い床で乗り付けることになり、ドアが開けばホームの土台が見えていた。日本だとまあ見かけない光景だ。バリアフリーのかけらもない。

フランクフルト中央駅に着いた。数十のホームが大屋根の下で横一列に並ぶ巨大な行き止まり式のターミナル駅で、数多くの線路を右に左に進みながら、ゆっくりと地上ホームにたどり着く様は一種の風格すら感じるものだ。Sバーンに乗った場合は地下のホームに到着することになるため、空港駅からこれを味わうにはREを選んで乗る必要がある。

ふきふき

偶然にもICE-Tがいたので撮影した。ドイツ鉄道公式サイトでKing of the curveの称号を与えられている車両で、車体を傾けて険しいカーブのある路線をぐいぐいと進むことができるという。かっこいい。その左奥に見えるのは普通の近郊列車である。近郊列車と高速鉄道が同一平面上で揃う景色は日本で見ることができないものだ。

見知った外観ではない

前回も宿泊した東横イン フランクフルト中央駅前に今回もお世話になることにした。前回の記憶があるのでホテルへの道もばっちり。南側の出口を出て駅に沿って西に向かうとそう時間もかからずにつくことができる。インターホンを押して建物内に入ればチェックインカウンターは長蛇の列だった。待っている最中にぼくの後ろにも人が並んだ。前からも後ろからも日本語が聞こえてくるし、前の人間の荷物には生意気にもHNDと書かれたラゲージタグがそのままついているではないか。つまりこいつはゴールデンウィークというド繁忙期に羽田からのANA直行便に乗っていると自白しているわけである。まったく、ただただ羨ましい。

そんなに待つことも無く列が捌け自分の番になった。決済は予め済ませているが2ユーロの市税を現金で追加で払い、ルームキーを受けとった。部屋は上層階ですこし窓側に出っ張りがあるが、それ以外は日本の東横インとほとんど同じである。

ホテルで荷物を置き身軽な状態で駅へ向かい、ATMで少しは必要になるであろう現金を錬成。夕食の時間ではあるがしっかりしたレストランでドイツ料理なんて食っていたら破産不可避である。駅のスタンド簡素なピザ2片を購入しホテルのロビーで食べた。ついでに併設されているバーでビールを注文して飲んだ。前回の宿泊時と違い、まだ白米は恋しくないので名物のしゃぶしゃぶは食べなかった。あれを食べてる人は欧州最終日とかそんな感じだと思う。実際前回ぼくも最終日に泊まったし。

部屋に戻りシャワーを浴び、荷物整理をして就寝。疲労のせいもあり21時ぐらいにはもう寝ていたんじゃないかと思う。

 

4/30、朝になった。朝食サービスの開始時刻に合わせてロビーフロアへと向かい、ちゃっちゃと飯を平らげて部屋に戻ってきた。そのまま寝巻から着替えて出発準備、チェックアウトをして駅に向かった。朝食を取りつつ7時台の電車に乗るため、かなり切羽詰まった朝になった。

乗りたい列車は7:40 ギリギリ案内板に出ていなかった。もうすこしゆっくりしても良かった。

今回の旅もユーレイルパスというヨーロッパの鉄道がだいたい乗り放題になるパスを使用した。昨今の為替事情に加え、今回からはユース(U27)割が使えなくなってしまったせいで前回使用時よりもコストパフォーマンスがかなり低下している。渡航数ヶ月前のセールで2割引ぐらいの価格で確保しているものの、列車ごとに早割チケットを手配するのと大差ない額である。ただ、ドイツ国内においては自在に列車を変更できるというアドバンテージが強すぎるので、今後もユーレイルパスを使うことになるのではないかと思う。

ICE2570 Frankfurt(Main)Hbf→Kassel-Wilhelmshöhe

最初はICEに乗ってカッセルへと向かう。うれしいことに初期型のICE1だ。1990年代から最前線で活躍している車両ということもあり、少しずつ数を減らしていくことになると思われる車両だ。

ICEは座席の指定は任意である。椅子ごとに予約区間が表示されており、この区間の範囲外であれば自由に座って良い。とはいえ日本人はドイツの土地勘なんぞ持って無いと言ってもいいだろう、困った時は何も書かれていない場所に座るのが良い。幸いにもこの列車はフランクフルト始発で、目的地は次の停車駅カッセルである。Frankfurtと書かされていない席が潤沢に用意されていた。

ちなみに区間以外にも文字が記載されていることがある。優先席とか、上級会員用の椅子とかである。

定刻通りにフランクフルトを発車した。列車は数十分ほどフランクフルト近郊を走った後には丘陵地帯に抜け、沿線には穀物や菜の花の畑が目立つようになった。車両は高速鉄道用であるが、100km/h~130km/hあたりでまったりと走っていた。

定刻通りに出発したからと言って現地に定刻通り到着する…なんてことは全く無かった。特に目立って信号待ち停車とかしていないにもかかわらず、乗っていたICEはいつのまにか10分遅れになっていた。まったり走ったせいだと思う。

そんなこんなで15分ぐらい遅れてカッセルへと到着した。ドイツでは中央駅という意味合いでHauptbahnhof(Hbf.)が多様されるが、カッセルの場合はHbf.ではなくこのWilhelmshöheが玄関口になっているようだ。

出口まで延々とスロープが続いていた。あまり日本では見かけない構造だ。早速駅前に出て路面電車の切符を買う。無事に券売機を見つけ、1日券を購入…といったところなんと支払いのタイミングでクレジットカードを受け付けてくれなかった。タッチしても差し込んでもウンともスンとも言わない。じゃあ現金で…と思ったが、手元に用意してある20ユーロ紙幣もまた受け付けてくれないし、硬貨も支払うには足りない。

どうしたものかと電停や駅コンコースを徘徊していると、DB窓口の中に券売機を見つけた。こちらではしっかりとカードが反応して購入することができた。

4系統の電車に乗って目的の駅へと向かう。電車は15分間隔で走っているがそのうち半分は途中のPapierfabrikで折り返してしまうため、目的地に向かうには30分間隔の列車を掴まなくてはならない。幸いにも、次の電車は7分後だ。

車窓を見て復路で降りたい場所を見定めつつ、30分~40分程度路面電車に揺られて目的地、Niederkaufungen Mitteに到着した。この駅の特徴は、ずばり次の写真が示している。

なんだこの駅…気持ちわりぃ…

この駅の特徴、それはレールの数が多いということに他ならない。こちら側の電停と反対側の電停の間に6本のレールが並ぶその姿はとても奇妙なものだ。

踏切から奥にカメラを向けると仕掛けが見えてくる。

この区間は元々貨物線であり、そこを路面電車が間借りしているという状況である。この貨物線はいまだに現役で、時々大型の貨物列車を通す必要があるが、路面電車はそれよりも車体が小さく、そのまま単線の線路に路面電車向けホームを作ってしまったら貨物列車と干渉してしまう。そのため、電停の部分だけほんのわずかに線路を外方にずらし、貨物列車と干渉しない範囲に電停を設置したという経緯だ。6本のレールがあるなかで、左から1/4本目(左側の電停用)、2/5本目(貨物列車)、3/6本目(右側の電停用)がそれぞれペアになっている。

こんな感じで、電車は6本のうち適切な2本を使用して、電停側に幅寄せして停車する。大昔の雑誌で見た奇妙な光景を目の前で見ることができたということで、非常に満足した。というより、これを見る為だけにカッセルにわざわざ寄ったのである。この人間の旅行?というものはだいたいこういうもので、著名な観光地に寄ることはめったにない。

滞在は10分程度だったが満足したので、折返しの電車に乗って市内へと戻った。いくらこの奇妙な駅を見たいがために来たと言っても路面電車の電停で1本落としてさらに30分待ちぼうけという気にはならなかった。

 

続き。

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