新しい風に乗って

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全扉降車に求めるもの

広島電鉄で、先日より1000形に限って全扉降車のサービスが始まった。

これは、通常だと中扉から乗車して前扉から降りるところを、PASPY+全国10種のICカードを1人1枚利用する場合に限り、乗ってきた中扉からも降りれるというサービスだ。f:id:setoutivrm:20150307142556j:plain

1人1枚利用することが条件というのは、結局は降車の際に運賃箱で特段の操作が必要ないICカードであり、たとえ1人1枚利用であっても普通のPASPYを持って小児料金を払う人や、あるいは残高不足の人は利用することができない。

 

さて、この全扉降車、信用乗車に近いものでもあり、ただでさえ車両が長いうえに出口付近が流れの悪いボックスシートになっている1000形に対しては非常に有効であると僕個人としては考えており、もちろん普及してほしいのではあるが、いくつかの点で納得いかないような、ちょっとモヤモヤするポイントがあるのである。

①リーダーの数は適切か?

広島電鉄では3種類の運賃体系が存在することもあり、乗り換え制度のために乗降電停を記録する必要もあることからICカード利用の際も乗車と降車の2回タッチが必要となる。今まで中扉には乗車用リーダーが車両に向かって左右に存在していたが、今回のサービスに伴い左側のみ残り右側の物は降車リーダーになってしまった。これにより降車にかかる時間が減ったとしても乗車にかかる時間が増えてしまう可能性がある。中扉から降車する客は多くても全体の半分を超えることが無いと思われるが、乗車客はその大半が従来と同じく中扉から乗車するのである。社会的な常識としては降車が完了してから乗車するものであり、折角の短縮を食いつぶしてしまう可能性があるのではないか。

改善手法は、乗車リーダーを2個に戻す方法である。この場合は今以上に乗車リーダーと降車リーダーの区別が重要となる。なお2012年の信用乗車社会実験では中扉の降車リーダーが設置された部分にも乗車リーダーが存置してあった。

 

②電停側は大丈夫か?

従来では乗車客が中扉付近にたむろし、ドアが開くと同時にその混雑が減る一方で降りた人が前扉付近に混雑を作っていくという一種の流れが存在した。全扉降車で、例えば横断歩道が進行方向にある場合は中扉降車客と電停の乗車客が交錯する可能性がある。これは宇品線など電停の狭いところのみならず、本通や紙屋町など多くの人が待っている場所でも十分生じる可能性がある。対策は電停の幅を広げることの他、出口を前後に設置することである程度改善できるのではないかと思う。八丁堀下りなど、そのまま胡町の交差点まで後ろを伸ばしてもいいぐらいだと思う。

 

③そろそろ一日券をICに詰め

PASPYが普及し、乗り換えカードと共に磁気券から退化した一日券。それを使う利用者、特に電車の利用に不慣れな外国人や観光客は中扉での降車を行うことができない。あるいは制度を知らずに降りようとしてトラブルになる可能性も十分考えられる。全扉降車サービスの発表前から何度も言っているのだが、そろそろIC一日券を採用する頃合いだと思う。

都内の各路線バスと同じ運賃箱を使用していることもあり、一日券の設定自体は可能ではないかと思う。問題は電車一日、ピースパス、電車松大などと多数の一日券が存在することと、前乗り先払い制度ではなく乗車後しばらくしたうえで乗務員の所へ出向く必要があることだ。これに関しては広島駅と宮島口で地上側で一日券を積むことができれば大半は解決すると思われる。それでもぐるりんパスなど、他の乗車券に付帯しているものはどうにもならないが…

 

以上3点が全扉降車に求めるものである。