夜行バス

「…それでは狭い車中ですが、皆さまどうぞごゆっくりおくつろぎくださいませ…」

この文言を聞くたらプレリュードは終わりである。暫くの後、周囲は光の世界から闇の世界へと変貌を遂げる。そしてそれは同時に我々を闇の世界へと引き込む力を持つ。

しかし、ただ受動的に引き込まれてしまえば、それはただこの旅路はただの移動手段へと変化してしまうであろう。旅というのは、新しい発見をすることに他ならない。

ふと外の世界を見ようと思った。1枚の布で仕切られているだけだ。それを下から潜りこみ、布とガラスの間に挟まった。するとどうであろうか。

一定間隔で流れていく無個性的な高速道路の遥か彼方には、不均質で光輝く町である。煙突からは蒸気が悠々と主張をし、赤色灯が彩をつける。そんな景色に見とれていたところ、視界はナトリウム光に遮られ、ついには視界から追い出されてしまった。

 

どれぐらいたったであろうか。時計を見れば0時25分と書いてある。既に日付をまたいでいた。欝になるような曇天も今いずこ、天に仰ぐとどうであろうか。星空である。それは都会で見るそれよりも、強く、輝きあふれ、そして我々に何かを訴えているようにも見れた。

しかし、このまま起きているわけにはいかない。翌日、といっても既に本日だが、日中に寝てしまっては元も子もないのである。頭を元に戻し、闇の世界へ入門することとした。今日ここまでの記憶と記録。そして明日に得るであろう記録と記憶…………

 

 

 

 

 

 

 

 

どれぐらいたったであろうか。一番前の時計を見た。

 

0時34分

 

夜はまだ長い。